【第5章】
それは突然、いや、先輩からしたら来たるべき時が来たという感じだったんだろう。

「今日をもって、軽音部を退部します。」

それは、木曜日の昼休み、部員全員の前で発表された。先輩の軽音部の退部、それはバンドの解散も意味しているわけで、すすり泣く音や、やめないでぇ!といった悲鳴に近い声が部室に響いた。部員たちはみな悲しんだ。


僕を除いては。


怒り。それが僕の心に浮かんできたものだった。

今考えたら、なんとも幼稚でみっともない。でも、先輩の退部は、先輩と過ごす木曜日の消滅を意味していて僕には受け入れがたいものだった。受け入れたくもなかった。

それだけじゃなかった。
どこかで優越感を感じてた。僕が先輩の特別な何かであると信じていた。先に言われたなかった。怒り、悔しさ、苛立ち、迷い、心がもやもやした。爆発した。

その日の放課後、僕は、部室に向かった。