シンデレラは騙されない



会長が星矢君の部屋を出て階段を下りた事を確認した凛様は、私に目配せをした。

「それでは、星矢君、今日一日心の残った事を俺達に英語で話して下さい」

星矢君は凛様の胡座の中で、必死に考える。
とにかく凛様が大好きな星矢君。
凛太朗が帰ってきて嬉しかったと、たどたどしい英語ででも一生懸命話してくれた。

そして、星矢君は、次に私に質問した。
「麻里先生は?」って。

凛様も何だか楽しそう。
私がどんな話をし始めるのか、星矢君と同じ表情で心待ちにしている。

でも、私は、当たり障りのない今日の感想を述べた。
この星矢君のいる純粋な空間で嘘をつく事は最悪な大人がやる事。
だから、ちょっとだけ私の本心を含む嘘じゃない先生らしい回答にした。

私の話を聞きながら星矢君は大きなあくびをする。
時計を見たら、普段ならもうとっくにお風呂に入っている時間だ。

「星矢君、今日のお勉強はここまでにしましょう。
後は、凛様とお風呂の中で英語で会話をしてきてね」

私はそう言って、立ち上がった。
夜も深い時間に入ると、そこは大人の時間になる。
寂しいとか切ないとかそんな気持ちが表に出始める前に、私はこの部屋を出なければならない。