シンデレラは騙されない



凛様の部屋がどこにあるか私は知らない。
一つ屋根の下といっても、この豪邸では一駅分くらい離れているみたいなそんな距離感があった。

星矢君の宿題を見終わった後、星矢君の明日の幼稚園の準備を手伝っていると、珍しく星矢君の部屋に会長が現れた。

「星矢、今日はお父様とお風呂に入る?
それともおばあちゃまと?」

私は会長に挨拶をしてそそくさと帰ろうとした。
家族団らんの場に先生やナニーは必要ないから。

「麻里先生、ちょっといい?」

私は心臓が止まりそうになる。
大好きな会長だからこそ、凛様の事は触れてほしくない。
会長に何か言われたら、私は息をする事もできなくなるから。

「麻里さん、あなたにはとても感謝してます。
てこでも動かなかった凛太朗の頑なな心を開いてくれて」

会長は言葉とは裏腹に、小さなため息をついた。
そして、会長がその言葉の続きを繋ごうとした時、凛様が開いている星矢君の部屋のドアをノックした。

「今日、俺は、星矢のベッドで寝るって約束してんだけど」