シンデレラは騙されない



「今日はいいよ。
でも、俺が今言った事をちゃんと胸の中にしまっておいて。
俺達はこれから恋人同士になって、そして結婚する。
それは何があっても変わらない。
何でか分かる?
それは、俺がそう決めたから」

凛様は長くて細い綺麗な指先で私の頬を撫でる。
まるで、自分のもののように。

「凛太朗~~~、早く~~」

星矢君の怒った声が、また遠くから聞こえた。
凛様は面倒くさそうに私を見て、そして楽しそうに笑った。

「今行くぞ~~」

凛様はそう言うと、今度は私の髪を耳にかけて私の左頬に軽くキスをする。
その仕草は、自然で、当たり前で、私のがんじがらめにかけた心の鍵を一瞬で破壊した。

凛様の後ろ姿を見送りながら、私は泣いた。
この気持ちに嘘をつく事が苦しくてたまらない。

こんな事なら、山本さんのように単純な片思いの方が良かった。
手の届かない素敵な人…
そんな気持ちで一年を過ごしたかった。

何で、凛様は、私の事を好きになったのかな…
結ばれる事なんてあり得ないのに…