凛様が帰って来なくなって、もう二か月が過ぎようとしている。

季節は肌寒かった春先から、小雨の降りしきる梅雨の季節に変わった。

星矢君はしばらく凛様を恋しがって泣いていたけど、最近はもうすぐ帰って来るお母様の事を想って元気に過ごしている。

会長や星矢君のお父様の専務に関しては、いつもの事だと気にもしていない。

でも、一か月前に、星矢君が泣いてばかりいる毎日に心を痛めた会長が、専務に凛様の様子を見に行くよう頼んでいるのを目撃した。

私は息を殺して二人の会話を聞いていたら、凛様は、どうやら月に一度の大切な役員会にも顔を出していないらしい。

「ちょっと、心配ですね…
日本に居ない時以外は、必ず役員会には出ていたから」

専務の言葉に、会長も心配そうに頷いた。

「この間も凛太朗と二人になった時に、凛太朗の将来について聞いてみたんだけど、ニコニコ笑うだけで、その場から居なくなって。

本当に風みたいな子…
我が子ながら、何を考えて生きているのかさっぱり分からない…」

会長はまた更に深いため息をついた。