「皆は、ある程度の年齢になったら、バンドには見切りをつけて辞めていく。
だから、今のメンバーは、俺が年長者。
他の皆はまだ20代前半とかで若いから、バイトに励んでるよ」
私は何だかガッカリ感が半端ない。
ずっと変わらない同じメンバーで、夢を追っているのかと思っていたから。
「もちろん、スタジオ代は、皆で払ってるんですよね?」
凛様はここも悪びれる事もなく、首を横に振った。
「俺が払ってるよ。
あいつらの安月給から払わせるのは可哀想だろ」
私は自分の中で答えが出た。
答えは出たけれど、その事について深く考えたくない。
深く考えてしまったら、凛様に悪態をつきそうだから。
そんな私の不機嫌な顔を凛様は心配そうに見ている。
「どうした?
具合でも悪い?」
私の中で理性と本能が戦っている。
凛様の私生活に首を突っ込むなんておこがましいけれど、でも、やっぱりどうしても聞きたい。
「凛様は…
今の凛様は、何で働かないんですか…?
っていうより、働かないのに何でお給料がもらえるんですか?」
こんな事になるのなら、お酒を飲んでればよかった…
究極のお坊ちゃまを相手に、何で働かない?なんてあり得ないよね…?



