シンデレラは騙されない



星矢君の英語の発音は凛様の完全コピーで、アメリカの童謡を歌う姿も凛様のミニチュアを見ているようだった。

大学までアメリカにいた凛様はきっと私より英語がペラペラのはずなのに、ちゃんと私を立ててくれる。
そんな凛様の気遣いに、私は何だか居心地の良さを感じていた。

そして、あっという間にお勉強の時間は過ぎて行く。
星矢君はおばあ様とお風呂の時間だ。
凛様はいやいや駄々をこねる星矢君を簡単に抱き上げると、私に手を振って星矢君をおばあ様の元へ連れて行った。

私は厨房へ行き、私の事を待ってくれていた清水さんと遅い夕食を取る。
他愛もない話をして食事を済ませると、私は自分の部屋へそそくさと帰った。

今日は疲れた…
昨夜の凛様の登場からほとんど寝ていない。
疲れるのもしょうがないか……

母屋とつながる渡り廊下を歩いていると、離れの私の部屋に面している庭の片隅に人影が見えた。

中庭の薄明りの中、笑顔の凛様が立っている。
それも、シャンパンかワインのボトルを手に持って。