凛様の言葉の意味が上手く私に伝わらない。
そして、私の中で、あの日の専務の言葉と綾さんの涙が、そうじゃないと私を責め立てる。
でも、凛様の言葉を信じたい。
後悔するのは、あの夜の弱虫な私だけでいい。
「麻里が家を出た理由はすぐに分かった。
出て行った麻里を責めるとか、許すとか、そんな気持ちなんてこれっぽっちもないよ。
斉木家の訳の分からないルールに、麻里は従っただけ。
すごく辛かったけど、でも、ここで負けるわけにはいかないって思った。
それに、しばらく会えなかった期間が、更に、俺の決意を固くした。
俺は、何があっても麻里を幸せにする。
麻里が望む本物の幸せを俺は必ず手に入れる。
ちゃんとその権利を掴んでから、麻里を迎えに行くってそう決めたんだ」
車は渋滞に入り、ずっと止まっていた。
凛様の右手はずっと私の左手を握ったまま、その手に力が入る。
「その前に…
麻里が俺の事をまだ好きでいてくれてたらの話だけど…
もしや、まさか… そんな事はないよな?
ないよな…?」



