シンデレラは騙されない



「凛様… 私…」

何十回でも何百回でも謝りたかった。
でも、謝ってもどうにもならない事も分かっている。
私は、会長や綾さんと約束をしたのだから。
凛様と完全に別れる事を。

駐車場に着くと、凛様は足早に私を助手席に乗ぜた。
そして、何も言わずに車を出す。

「凛様、私、家に帰らなきゃ…
そうじゃないと…」

「そうじゃないと?」

凛様は運転しながら横目で私を見る。
その表情に、私はますます訳が分からなくなった。
何だか普通に見える。
久しぶりに会った恋人を見る眼差しと同じ…

「そうじゃないと…
凛様や、私や、みんなに迷惑をかける。
もう、私と凛様は…」

タイミングよく信号が赤に変わった。
凛様はゆっくりと車を止め、そして、私の顔を覗きこむ。

「俺と、麻里は…
別れてなんかない、そうだろ?」

凛様は空いている右手で私の左手を優しく包み込と、無理に笑顔を見せる。
そして、指を絡めて、私の手の甲をそっとさすった。

「俺は麻里から別れたいなんて聞いてないし、俺の方からも別れるなんて一言も言ってない」

「そ、それは…」