弟の最後の受験が無事に終わり、後は発表を待つばかりとなったある日の夕方、私はいつものように家へ向かう電車に乗っていた。
二月も後半になると、昼間は春のようにポカポカ陽気に包まれる時がある。
今日がそんな日だった。
私は今の会社の屋上でよく一人ランチをする事があった。
そのビルの屋上には緑や花々が咲いていて、ちょっとした公園のような憩いの場となっているため、お昼時になるとたくさんの人であふれ返る。
今日は、私もポカポカ陽気に包まれて、お母さんの作ってくれたお弁当を食べた。
以前よりも痩せてしまった私の事を心配して、お母さんの手作り弁当には必ずお肉か揚げ物が入っている。
今日は、私の大好物のコロッケだった。
ポカポカ陽気に、大好物のコロッケ…
そんなささやかな幸せに、心が癒される一日だった。
いつもの駅で電車を降りて、いつもの二番目の改札口から外へ出る。
外の景色はオレンジから紫に変わろうとしていた。
そんな空気の色の移り変わる時間帯が、私は大好きだった。
そして、普通電車しか止まらない小さな駅。
だからこそ、すぐに気付いてしまった。



