俺はそう言って、星矢を抱きしめた。
でも、本当にそうなのか少し不安になる。
そして、麻里の覚悟が本物ならば、今、麻里に会うのは止めた方がいいのかもしれない。
中途半端な状況で会っても、麻里は俺の元へは戻って来ない。

更に、俺は自分自身にスイッチを入れる。
麻里をシンデレラのように幸せにするために、王子は何をする?
最高級のシチュエーションを準備して、麻里を迎える事だ。

俺は星矢と一緒に、ネット配信の映画の中からシンデレラを探して、二人で肩を並べて鑑賞した。

「星矢、この結末を覚えとくんだぞ。
王子さまとシンデレラは幸せに結婚しましたとさ、ちゃんちゃんってね」

「でも、お母様もおばあちゃまも、シンデレラに出てくる人みたいに意地悪じゃないよ…」

俺は隣に座る星矢を抱きしめた。

「そりゃそうだよ。
斉木家の人間は誰一人意地悪はいない。
皆、麻里先生の事、大好きだしね。

だから、これは俺の問題なんだ。
王子様に全てがかかってる」

すると、星矢はすごく厳しい顔で、俺の事をジッと見ている。
まるで、自分自身に見られているようで、俺はドキッとした。

「凛太朗、この王子様はすごく努力をしてたよね。
シンデレラを見つけるために。

凛太朗も、頑張んなきゃダメだよ。
凛太朗が努力しなきゃ、麻里先生はシンデレラにはなれないからね!
悠馬さんに取られちゃうからね!」

俺は、何だかシュンとした。
その反面、星矢の的を得た言葉に心が奮い立つ。
そうだよな…
麻里は絶対に斉木家の長男のお嫁さんとして迎え入れなきゃいけない。
それが最上級の麻里の居場所だから。

俺は星矢とハイタッチをする。
星矢、最高のアドバイスをありがとうと、幼稚園児に感謝して。

そして、俺が日本にいる間に、母さんからの返事は何もなかった。