「綾はいつ俺と交代できますか?
すぐに日本へ帰りたいんですけど」
義兄さんはまた大げさにため息をつく。
「凛太朗君はしばらくはそっちにいた方がいい。
凛太朗君のためにも、麻里ちゃんのためにも…」
すると、義兄さんの近くで星矢の声がした。
俺と話したいと泣いてるのが分かった。
「義兄さん、星矢がいるんでしょ?
星矢に替わって下さい…」
義兄さんはしばらく黙っていた。
でも、隣で泣く我が子を放っておくわけにもいかない。
そして、星矢と替わる前に、義兄さんは俺に釘をさす。
「凛太朗君、星矢を巻き込むのは止めてほしいんだ。
頼む…」
義兄さんは小さな声でそう言うと、星矢にスマホを渡した。
「凛太朗!
ぼ、僕は、凛太朗と麻里先生が結婚してほしいって、ちゃんと言ったんだ。
でも、お母様が泣き出して、そしたら…」
俺は星矢の声に胸が締め付けられる思いだった。
涙で続きが言えない星矢が可哀想で愛しくて、俺自身、目の芯が痛くなるほど、泣きたくてしょうがない。
「そ、そしたら…
麻里先生がいなくなっちゃった…
お母様もお父様も、おばあちゃまも誰も麻里先生がどこに行ったか知らなくて…
凛太朗は知ってるよね…?
麻里先生、僕の事、忘れてないよね…?」



