シンデレラは騙されない



専務の言葉に、綾さんの瞳から大粒の涙がホロホロと流れ出す。

「私は…
本当に、麻里先生に幸せになってもらいたかったの…
親友の悠馬君を紹介したのも、そんな想いがあったから…

凛太朗とそんな仲になっていたなんて…
あの時、私や母が麻里先生の事を想ってあのお見合いを成功させようと頑張っていた事が、何だか虚しくて悲しくて…」

私は苦しくて息ができない。
お母様の涙を見て、星矢君もまたシクシクと泣き出した。

こんなにも私の事を想っていてくれた人達を裏切ってしまった現実に、私は後悔と恐怖心しか覚えない。
凛様とのささやかな未来を夢見た私が愚かだった。

すると、ずっと黙っていた会長が、やっと口を開いた。
苦悩に歪んだくちびるから、最初にため息がこぼれる。

「麻里先生…
凛太朗は何て言ってるの…?
星矢の話では、結婚まで考えてるみたいだけれど」

会長の目は私の事を責めていない。
責めてはいないけれど、どうする事もできないという確固たる心情は表情から分かった。