「それはもう無理だよ。
俺が連れて行くって悠馬さんと約束したし。
いいよ、どうせ暇だし、その何とかっていうホテルも見てみたいしね」
凛様の言葉にいつもの柔らかみはない。
私は胸が苦しくて息をするのがやっとだった。
「星矢、勉強は?」
凛様はそう言いながら、星矢君をひょいと持ち上げた。
「麻里先生とのお勉強が終わったら、一緒に風呂に入るんだろ?」
凛様は星矢君の体をくすぐって星矢君を笑わせる。
星矢君の笑い声が、この今にも何かが起こりそうなリビングの雰囲気を一変させた。
それも凛様の計算した事。
会長も星矢君の楽しそうな笑い声に、いつの間にか笑顔になっていた。
でも、私の胸の鼓動は治まる事はない。
私はどうにか息を整えて、星矢君を連れてリビングを後にした。
星矢君のお勉強は正念場を迎えている。
最近は、私も星矢君の塾に付いて行く事が多く、お受験に必要なスキルを私自身もたくさん身につけた。



