「麻里先生との待ち合わせの場所はどこですか?
俺が車で送っていきますから」
ぶっきらぼうにそんな事を言う凛様に、会長の表情が変わった。
でも、何も言わない。
私の心臓は飛び出すくらいに激しく高鳴っている。
凛様は平塚さんから教えてもらった待ち合わせの場所を、確認のために復唱する。
そして、勝手に電話を切った。
それは、まるで、自分の権利のように。
「麻里先生、そういう事だから。
モーリステイラーホテルだって」
「モーリステイラーホテル?」
会長がそのホテルの名前を聞いて驚いた。
「やっぱりあのホテルの立ち上げに悠馬君も一枚噛んでいたのね。
そういう噂はあったけど、そうだとしたら彼は相当なやり手で彼の実力は本物だという事。
あのホテルの一番いいお店を予約しているはずよ、麻里先生。
ちゃんとお洒落をしていってあげてね」
そして、会長は思い出したように凛様を見た。
「それと、凛太朗、送って行くのは他の運転手に行かせるから、あなたは遠慮しなさい。
そんなお見合いをしようとしている二人を邪魔するみたいでしょ」
会長はそう言うと、私を見て笑顔で頷いた。



