シンデレラは騙されない



そして、ソファに座っている凛様をチラッと見る。
凛様の視線は私を通り越してどこか分からない場所を睨んでいた。

でも、そのピリピリ感を、会長はまだ何も気付いていない。
だって、嬉しそうな顔をして、私を見たり星矢君を見たりしているから。

「悠馬さん、麻里先生と結婚するの?」

星矢君の質問は静まり返ったリビングの中で響き渡る。
私はどうしていいか分からずに下を向いた。

「そっか、分かった。
いいよ、僕は悠馬さんだったら、麻里先生のお婿さんに認めてあげる」

すると、そんな風に機嫌よく話している星矢君から凛様が受話器を奪い取った。
私は怖くなって目を閉じる。

「もしもし、悠馬さん?
久しぶりです、凛太朗です」

電話の向こうで平塚さんが驚いているのが分かる。
だって、この間の凛様の話しぶりでは、あまり親しくはない感じだったから。