私はまた首を横に振った。
ごめんって謝るところが凛様の優しいところ。
だって、凛様が謝る事はないんだから…
そして、私はもう何も言わない。
平塚さんの事も、凛様との関係をどう考えてるかという事も。
星矢君の受験が終わるまではって、二人でちゃんと約束したから。
雲に隠れていた月がやっと顔を出した。
九月も中旬を過ぎ、この時期に見える月は見事な満月で、まるで私達の未来を明るく照らし出してくれているような錯覚に陥る。
そんな月を見ていると、私も凛様も不思議と笑顔になる。
「麻里、キスしていい?」
私が困ったように俯くと、凛様も困ったように目を細めた。
「おかえりのキスをもらってないんだけど…」
私は上目遣いで凛様を見る。
凛様の子犬のような笑顔に思わず顔を緩めてしまう。
「ただいまのキスだってしてないし」
私は可笑しくてまた笑った。
「アメリカでは単なる挨拶のキスなのに、麻里は俺に挨拶もしてくれないのか…?」
私はそんな凛様から目を逸らした。



