凛様は当たり前のように、私の肩を引き寄せて歩き出した。
私の胸がチクチク痛む。
凛様の匂いを思い出して…
そして、池の奥の方は電灯が少なく池の状態が全く分からない。
水面も真っ黒い墨のようだ。
私はしばらく目を凝らして水面を見ていたが、でも、諦めた。
水の中の生き物はもう寝てしまっている。
それくらい、静かな夜だから。
凛様は池を囲んでいる柵に腰掛けた。
池を背にして、大きくため息をつく。
「ねえ、このまま、俺と逃げようか…?」
池を覗きこんでいた私にも、凛様の囁くような言葉は届いた。
この光のない静けさが私の心を締め付ける。
でも、私は逃げたりしない。
そう心に言い聞かせて凛様の隣に腰掛けた。
「私は、逃げたくありません…
星矢君のお受験が終わって無事に合格の文字を見るまでは、ちゃんと星矢君の近くにいてあげたい」
凛様は分かってるように目を細めて私を見ている。
私の言いたい事は何でも知ってるし分かってるみたいなそんな瞳で。
そして、麻里は俺だけの物と決まっているように微笑んで、静かに目を閉じた。



