この家に居る限り、私と凛様の関係は雇い人と家の主。
それをひっくり返す勇気はまだ私の心に芽生えない。
凛様は苛立たし気に自分の頭を掻きむしった。
そして、ため息をつきながら立ち上がる。
「星矢を寝かしたら、またここに来るから…」
私は泣きながら首を横に振った。
「ダメ…
私は、星矢君のお受験が終わるまでは、凛様の事より星矢君の事を優先するって心に決めたの…」
「話ぐらいはできるだろ?」
それでも私は首を横に振った。
「じゃ、この先の公園で待ってるから。
麻里が来るまでずっと待ってる」
凛様はそれだけ言うと、離れから母屋へ続く廊下を歩き出した。
私は凛様が見えなくなるまで見送った。
凛様を好きな気持ちは、しぼむどころか苦しい程に膨れあがって、生真面目な私の考えを全否定する。



