夏の時期はあっという間に過ぎて行った。

綾さんは星矢君の夏休みに合わせて長期休暇を取り、日本へ帰って来た。
その代わり、綾さんの留守を補うために凛様が日本を離れた。

私も夏休みという形で長期休暇をもらったけれどそれは星矢君の家庭教師の話で、会社には毎日通う日々。

凛様が日本にいないとうだけで切なくて何も気力が出ない私は、実家で何となく元気のない日々を過ごしていた。

その頃の私達の関係は、ピンと張りつめた糸の上で正気を保っている状態だった。
星矢君の部屋の前の廊下で、ぎりぎりの我慢の中で少しだけ愛を囁き合う。
好きという気持ちはこれ以上にないほど膨れあがり、自制できる範囲を超えていた。

専務も会長も何も言わない事が、少しだけ気味が悪かった。
凛様は私と違い態度があからさまで、私への好意を隠す事に疑問を抱き始めている。

もし、会長や凛様の家族が私の事を認めてくれたなら、なんて、そんな希望を抱く自分が悲しかった。

そんなある日、二週間近くタイの方へ行っているはずの凛様から、土曜日の午後にメッセージが入った。

“会える?”

“え??
凛様、今、どこですか?”