夏休み前の学校終わり。

私は毎年恒例で行われている祭りに来ていた。
港に出店が並び、島に住んでいる全員が集まる。


「ねえ、結花!私焼き鳥買ってくるね!」


目を輝かせながらそう言ってきたのは一緒に祭りに来ていた親友の蘭(らん)ちゃん。


「うん、私砂浜に降りてるね」


蘭ちゃんはわかった!と、満面の笑みで言うと焼き鳥を買いに走っていった。

1人になった私は人混みを抜け、砂浜へと続く階段を降りた。

そこにはほとんど誰もいなくて、どこか寂しい。




「わあ、きれー」


今日は満月だ。
海に月が映り、すごく綺麗でずっと見てられる。


お祭りに来て月見てるのって私だけかなあ。


そう思って周りを見渡した。


やっぱり、月見てる人なんていないかあ。
勿体ないな綺麗なのに。





「結花ー!!焼き鳥食べよー!!」


月を眺めていると、焼き鳥を買い終えた蘭ちゃんが階段から私を大声で呼んだ。


ちょっと遠くて私の声じゃ蘭の耳に届きそうにないから代わりに大きく手を振る。


戻ろう、と足を1歩踏み出した時だった。



「こんな綺麗な月見ないなんて勿体ないなー」



すぐ後ろからそんな声がして咄嗟に振り向いてしまった。


後ろ姿だから顔は分からなかったけど黒髪の180センチはありそうな男性。


「ゆーいーかー!はやくー!」


また呼ばれ、私は進みにくい砂浜を走って蘭ちゃんのところへ行った。



その後も私は何故かその人の後ろ姿と声が頭から離れなかった。