「……あんた、名前は?」

言葉は交わさなかったけれど、
一緒に向かった駅までの道。

少し望月くんとの距離が縮まった気がしたと思っていると、
駅に着いた途端、彼が振り向きざまにそう
私に問いかけた。

「もうっ、一番最初に自己紹介したのに。
白石です」


少し頬を膨らませて答えた。
隣だから名前くらいは覚えてくれていると
思っていたのにと俯いていじけてみせた。


「知ってる。そうじゃなくて下の名前」


そう言われて、
驚いた表情を浮かべ、私は望月くんを見た。優しく微笑む望月くんにまた涙がにじむ。