「好きなやつとの記念日忘れる訳ねーだろ」

そう言って、晴馬は私の頭にポンッと手を乗せた。

この感じが久しぶりすぎて、なんだか恥ずかしい。

晴馬馬は頬を赤らめている私を

「可愛いな、美琴は」

と言って、昔のように私に笑いかけた。

「やめてよっ」

なんで......なんで......悲しくないのに......

「美琴?どうした?」

悲しくないのに、涙が溢れてくる。

「わからない、わからないの......」

どんどん涙が溢れ出てくる。

「美琴」

そう言って、晴馬は泣いている私を抱きしめた。

「 もっと、こうやって美琴を抱きしめていたい。だけど、もう時間がない。だからちゃんと聞いてくれ」

晴馬はそう言って、私の頬を伝っていく涙を拭ってくれた。

「うん......」

晴馬の言葉をちゃんと受け止めなきゃ。

「俺はお前と『これから先』を作ることができなかった。幸せにすることができなかった。だけど、太陽ならできる。お前をおいていくようなことはしない。だから、太陽を信じてやってくれ」

と言って、晴馬は私の目を真っ直ぐに見た。

晴馬の体が少しずつ消えていく。

「晴馬......」

そう言って、泣き続けている私に

「美琴、笑え」

晴馬は満面の笑みでそう言った。

晴馬の笑顔。

眩しい笑顔。

「うん......」

私も満面の笑みを浮かべた。

そんな私を見て、晴馬は安心したのか

「幸せになってくれ」

と、言った。

「うん」

しっかりと晴馬の言葉を受け取る。

「ありがとう、晴馬」