私の気のせいだろうか。
最近、イジメられることも、睨まれることも、冷たい言葉をかけられることも減った。
しかし、あの5人組だけは変わらない。
ちがう、あの女の子だけだ。
「あんた、はやくきえてくれないかな?太陽くんと私の邪魔しないで」
何回このセリフを聞いたのだろうか。
この子は何をもって私に邪魔をしないでと言っているのだろうか。
とりまきの4人は少し離れたところから私たちのことを見ている。
「人を不幸にするんだよ、あんた」
ここで『くだらない』
そう切り捨ててしまったら、今まで逃げていた自分と変わらない。
「そうだね、ずっとそう思ってた」
今まで黙ってばかりだった私が初めて言い返した。
とりまきの4人は驚いたような顔をしている。
一瞬、目の前に立っている女の子も驚いた顔をしたが、すぐに不機嫌そうな顔に戻った。
「思ってた?」
「今だってそうでしょ?」
「ちがう。私はもう逃げないって決めたの。みんなからも、あなたからも」
「っ......人殺しのくせに何言ってんの!」
「確かに私のせいで春馬が死んだのは事実」
あの日のことを思い出してしまう。
もう話をしたくない。
だけど、ここで逃げちゃダメなんだ。
「だったら......」
「きっとあなたも晴馬を失ったのは辛かったと思う」
好きな人がいなくなってしまう恐怖、辛さはよくわかる。
「でもね、世界で一番大切な人を目の前で失った私も辛かったの」
真っ直ぐに見つめる私からその子は目をそらした。
この子もわかっているんだ。
人のせいにしなきゃ苦しくなる。
自分が自分でなくなることが怖かったんだ。
でも
「私はみんなと、あなたと向き合う」
そう言った私を、その子は睨みつけ、どこかへ歩いて行ってしまった。
他の4人も戸惑いながらもその子について行った。
私の言葉はちゃんとあの子に届いたのだろうか。