教室に着くとあの子たちが言った通り、私の机や椅子、荷物がなくなっていた。
いつものことだからもう慣れた。
どこに何が隠してあるのかもすぐにわかる。
机と椅子は廊下、荷物はトイレかゴミ箱。
今日はゴミ箱に荷物が入っていた。
私はゴミ箱から教科書やノートを取り出し、廊下にある机や椅子をいつもの場所に戻す。
そして机に書いてある落書きを消す。
机にはマジックで大きく「死ね」や「消えろ」などと書かれていた。
毎日、毎日よく飽きないな
それを毎日消すのは面倒くさい
私が必死に文字を消していても、みんなは私のことなんて無視して普通に過ごしている。
すると、突然誰かが私の机を拭き始めた。
驚いて顔を上げると、そこには必死に机の文字を雑巾でこすっている太陽がいた。
「なんで......」
今までみんな私のことなんて見て見ぬ振りをしていたのに。
誰一人として手伝ってくれなかったのに。
なんでこの人は......
「お前には悪いことしちまったからな。それにこのくらい当たり前だろ」
と、何のためらいもなく言った。
「でも私、怒鳴って.......」
「いや、その前に俺が無神経なことを言ったから」
「でも」
と、私が手を止めると
「いいんだよ」
そう言って太陽は優しく笑った。
眩しい。
だけどなんだか暖かい。
晴馬の笑顔に......
「美琴?」
気がつくと私は泣いていた。
「っ......」
私はごまかすようにうつむき、再び手を動かした。
何度も机に涙が落ちる。
その涙を拭きながら、必死に机をこすった。
そんな私に彼は何も聞かなかった。
その時、一瞬私の心に太陽の光が差し込んだ気がした。