…行きたいって言われた時はびっくりしたな。




1年前のまだ高校2年生だった、梅雨の時期。



あの日は、梅雨の時期なのに雨が降ってなくて。



不思議だねって笑いながら、うちの近くの河原に寝っ転がってたんだ。




君は不意に真面目な顔をして。



『アメリカに行きたい』


と呟いた。


話される前からなんとなく、大事な話なんだな、って思ってた。


付き合う時も、友達の相談事も、全部ここで話してきた。


それは、あたしもそうだけど、海斗も同じで。


だから、大事な話っては思ってた。


でも、まさか。




まさか離れたいと言われると思わなかったよ。


突然そう言われたあたしは泣きそうになったっけ。


いきなり離れたいなんて、言われると思ってなかったから。


もちろん、あたしのことを嫌いになったわけじゃないのも。


大好きでいてくれていることも知ってた。


その時付き合って半年ちょっと。


互いのことはなんとなくわかってたから。


毎日 “好き” をくれる君が、あたしを好きでいてくれてたのをちゃんと理解してた。



でも、それはやっぱり頭の中での話で。



『離れたくない』



そう思った。



海斗と離れたら、今まで平気だった全てのものがいきなり怖くなる。



2人だったら平気だったものが1人だと急に平気じゃなくなる。



好きなのに、好きだから。



君がそばにいないのが、不安で泣きたくて仕方がなかった。