「そんなもん関係ない」


だけどこの人は、…あたしの叫びが聞こえないみたい。


そう、思ってた。


「お前がだれを愛しようと知ったこっちゃない。お前を僕のものにするだけだよ」


狂気な愛をあたしに注ぐ。


でも、その時あたしはやっとそいつの顔を見れたんだ。




自分のこと目をね、疑ったの。



視界の端にあの男を蹴ろうしていた海斗が目に入る。


だめだよ、海斗。



今蹴っちゃ、だめ。



あたしがあの人の顔を見てしまった今はだめなの。



「ねえ、ねえ。なんで寂しそうにしてるの」



なんでか、今だけあの人を助けたいと思った。

きっとそれは。




あなたが可哀想な人に見えたから。




かもしれない。


「はっ」


海斗も驚いて、その人を見つめる。


ストックモーションを静止しようと、力で止めて。


海斗の蹴りは空振りに終わった。



そうだよね?


蹴れないよ、この人を。



だってその人。






泣いてるんだもん。