______チリンチリン

ガラス張りの扉に付いている鐘が、店内に優しく響いた。
真っ赤に染まった空に包み込まれるように、その人は立っていた。

初めて見るお客さんだ。可愛らしいセーラー服姿が、きちんと整ったボブヘアーと似合っている。しかし視線は下を向いていて、前髪が顔を隠していた。

緊張しているのか、オドオドとしていた。扉を開けたままなかなか店に足を踏み入れない。人と話すのが苦手なんです、というのがひしひしと伝わってきて、私は思わずクスリと笑ってしまった。

それに反応した彼女は、ハッと思い切り顔を上げた。

前髪で隠れていた顔が明らかになる。思わず思ったことを声に出してしまった。

「綺麗な瞳ですね」

「えっ、あっ、えっと…………ありがとうございます」

尻すぼみになっていく言葉だったけれど、彼女は嬉しそうに小さく微笑んでいた。

「……それで、お嬢さん」

私が声をかけると、彼女は、小さくあっと声を上げると、私を見つめてきた。どこか辛そうな表情をする彼女。やがて小さな口を静かに開いた。

「___花を、買いたいんです………」

肩に提げたスクールバッグの持ち手を強く握りしめながら、彼女ははっきりとそう言った。