日も傾き、あらゆるものが黒く濃く影を伸ばしている今は、午後五時を過ぎていた。

私が自ら経営している花屋、通称【花家族】は閉店時間が二十時きっかり。そのためこの時間帯は少しずつ閉店準備に取り掛かる。とはいえ、閉店後も仕事は山ほどある。売り上げの集計や、店内の清掃。明日店内に並べる予定の植物の世話……。結局、家に帰れる時間は二十三時近くになってしまうのだ。

辛くはない、と言えば嘘になってしまう。けれど私はこの仕事が好きだ。規模は小さいし、有名でもない。それでもこの店の花を求めてやってきてくれるお客さんが居る。それだけで頑張れるのだ。

ふと壁に掛かっている小さなカレンダーに目を向ける。明日は花を仕入れる日だったことを思い出す。生鮮品である花は、市場で直接仕入れるのが普通だ。今はだいぶ慣れてきたが、花屋を始めたばかりの頃はこの仕事が一番大変だった。

明日は朝から力仕事ですか。

そう思いながら筋肉痛になることを覚悟していた時だった