【10月11日〜13日】

入院の為の書類。

私が書いた連帯保証人の欄以外は、白紙のままだ。


『聞きながら書こうと思って…』


書類関連にはめっぽう強かったはずの父が、気弱になっている様な気がした。


姉に聞きながら、やっと書き始める。


「入院する人の名前…俺か?」


『他に誰がいんのー?アタシやお母さんの名前書いてどーすんのよ?』


姉妹で笑いながら、父と向かい合う。


「医師からは何と言われましたか?……何て書けばいんだ?」


『さ、知らな〜い。何て言われたのか、そのまま書けばいんでしょ〜?』


『…何て言われたの?』



「……あんまり覚えてない。」



時は…そう。名俳優の緒形拳さんが亡くなったと、テレビで連日流れている。



そんな時期に医師から告げられた話を、父が混乱して覚えていないのも無理はないか?