「森先生、この書類の書き方を教えてもらっていいですか?」

「明日から、この子の家庭訪問に行くんですけど……
この道以外でないですかねぇ~?
この後、駅方面に行きたくて…………」と

先生が相手をしないといけない状況を作る彼女。

鈍い先生は、真面目な先生と受け止めているらしくて丁寧に相手をしている。

唯ちゃんは……

自分のことに手一杯みたいで気づいてないけどね。

「ちょっと咲、先生を頼らないで先輩の唯先生に相談しなさい。」

私の注意にも、クスッと笑って「は~い。」と返事をするだけ。



ふぅ~っ。

「おやおや、ご機嫌ななめですねぇ~」

「洋ちゃん。」

先生と唯ちゃんの鈍さと、咲のしたたかさにイライラしていたら

洋ちゃんに指摘されちゃった。

よく見てるなぁ~

長女気質の私は、昔から自分の気持ちを表に出して来なかったの。

我慢することが当たり前になってたから

誰かに「機嫌が悪い?」なんて、聞かれたこともなかった。

「特には………」って笑顔で答える前に

「ウソはダメだよ。」って、鼻を摘ままれた。

「イッタァ。」

「幼稚園の先生が、平気でウソをつこうとするからだよ。」

「…………洋ちゃん。」

「聞いてやるから着いておいで。」

closeしたドアの鍵を開けて、コーヒーを入れに奥に消えた。