ただ一方的に在木先輩が練習しているのを見ているだけの日々が続いて、気づいたら冬になっていた。

昨日から、学校ではクラスマッチが開かれていて、私の出番は昨日のうちに全部終わった。今日は応援だけ。一日中こころと過ごすことにした。

こころとは同じクラスで、在木先輩のことを話している唯一の友達。

こころとは高校から同じで、夏休み明けから急激に仲良くなった。

今では誰よりも信頼できる親友で、なんでも話せる存在だった。

「在木先輩見に行かんでいいん?」
「いいよ、そんなのストーカーみたいやし」
「さんざん毎日練習しとるとこ見つめといてよく言うよ」

たしかに。言われてみればそうだ。返す言葉もない。

「じゃあ、見に行きたい」

そう言って在木先輩を探そうと体育館を出ようとしたら、体育館の入口に在木先輩がいた。

野球部の仲間たちに囲まれて、楽しそうに笑ってる。

「あ!おった!」

そう叫ぶと、こころが私のカメラを奪って、在木先輩の後ろ姿を写真撮った。

「ええ?!なにしてんの?!」

驚いた私を見てクスクス笑ったこころは、「写真の1枚ぐらい持ってて損はないでしょ~」って満足感満載の顔をした。

悔しいけど、嬉しかった。

きっと私は、この頃から在木先輩のことが好きになりかけていた。