イズミの表情が暗くなっていく。
「・・・・リバル国王は、
聞き入れてくれませんでした。
私達は処刑されそうになりましたが、
隙を突いてエイダと共に脱出しました。」
「・・奥方様は・・守れなかった・・・。」
「エイダ・・・。
もう自分を責めないで。
お母様は最期に私達へ“生きて”と笑ってくださいました。」
塩水のおかわりをイズミに差し出す。
「お前も・・奪われたんだな・・王に。」
「・・・・バス、テナー、アルトは王の手中に堕ちました。
でも・・ソプラノに住む皆様は・・
きっとお父様の遺志を汲んでくれる・・。」
イズミの口元から血が滴る。
ギュッと自らの唇を噛むその強さから、
言葉にこそ出さない悔しさが伝わった。
エイダがそれを親指で拭う。



