が、しかし一向に訪れる気配はない。


今日は欠席なのかな。


諦めかけていたその時、教室の外から呼ばれた。


「会長ー!

すんません、あいつ自分からは行きたくねーって...。

なんで、昼休みに屋上で待ち合わせにしましたけど、大丈夫っすか?」


木下さんの教室に居た茶髪の彼が申し訳なさそうに言う。


「大丈夫よ、ありがとう」


また何かあれば言ってくださいね、と帰って行く。


優しい人だな...。


そのまま授業を受け、昼休みに入ったので屋上へ向かった。


女の子が相手でも初対面の人って緊張する...。


屋上の扉を開くと、少し肌寒い空気が頬を撫でた。


見回してみても人が居る気配はなく、そのまま待つ。


「.........なぁ」


「っ、どうしました?」


ボーッとしているところに声を掛けられ、肩が跳ねた。


男の子が苦手な私は後ろに後ずさってしまう。


「どうしたって、あんたが呼んだんだろ?」


目の前に立つ彼を見上げてしまうのは、私よりも背が高いから。


風にサラサラと揺れる黒髪に、クッキリした二重の瞳。


肌なんて肌荒れを知らなそうに細やかで...って、何を考えてるの。


「え?っと......男の子を呼んだ覚えはない...です」


「は?

じゃあ誰と待ち合わせしてる訳?」


「女の子...」


そう答えると、男の子はグッと眉間にシワが寄った。


「あんたまさか、名前見て女だと思ってんじゃねぇよな?」


「え...?」


「はぁ...」


首を傾げると大きな溜め息が降りて来た。


「あんたが呼びつけた木下咲良は男で、この俺だ」


「...............男の子!?」


驚き過ぎて声が出ない。