生徒会長で仕事をしていて、ふと資料が足りないことに気がつく。


目的の資料があるのは図書室。


ないと困るし取りに行こう。


誰にも会わないこと、話さなくて良いことを願いながら図書室へ向かう。


幸い、寮生活な私達は部活動や委員会活動以外で放課後の校舎に残っていることは少ない。


誰とも会わずに図書室に着けたことに胸を撫で下ろして、資料を探し始めた。


「えっと......」


時間を掛けて隅々まで資料を探すけど、一向に見つからない。


そこで申し訳ないと思いつつも職権を使い、貸出名簿を調べた。


「あ、貸出中だ...。

今日貸出開始だから期限は...2週間。

それじゃ間に合わないよ...」


ガックリと肩を落とす。


ちょっとだけ貸して貰えるか聞いてみようかな。


「名前は......木下咲良、2年生か。

女の子ならまだ話せそう」


クラスも書いてあるし明日教室に行こう。


今日は諦めて、寮に戻った。


寮は2人相部屋。


男子寮と女子寮があり、その中間地点に食堂や浴室など共有施設がある。


食事と入浴を済ませて、部屋でのんびり過ごす。


気取らなくて良いこの時間が凄く好きで、ないと困る。


紅茶をいれて、読書をしようと本を開いた瞬間。


コンコンと控えめなノック音が聞こえた。


「はい?」


思わず、生徒会長の時の声が出た。


「花音...あの、あたし」


良く知った声に、肩に入った力を抜く。


「今開けるね」


ドアを開けると、隣の部屋の佐野凛子が立っていて。


「どうしたの?」


「うぅ...花音ーっ」


「わっ...」


問いかけるなり、目に涙を溜めて抱き着いて来た。


「と、とりあえず入って?」


中に招き入れ、紅茶を注いで差し出した。


「ぐす...ありがと」


「何があったの?」


「木下くんが酷いのっ」


「え?」


凛子は私の唯一話せる友達で、中学からの付き合い。


最近、その木下くんに恋したらしく、いつも話をしていた。


そんな彼が酷いとは一体...。