『あ、わかったわかった!できた、こうだな!』

『はぁ……お母さんとお父さんは出てて。 終わったら呼ぶね』

『わかった、ちゃんと呼んでね』

『うん!』

最初の男の人の声は多分、父親で、あとに聞こえた女の人の声は母親だろうとすぐにわかった。
本当に陽菜の言うとおり仲良くなってたんだな。
そして、ベッドに座って今カメラのほうを向いているのは、陽菜だった。

『騒がしくてごめんね、悠真くん。
まずは卒業おめでとう。
日記読んでくれた?もし読んでなかったらこれ見終わったら読んでほしいです。

悠真くんには本当に感謝してるの。ありがとう。

今でもちゃんと覚えてる、妹さんから貰ったキーホルダーを悠真くんが落としちゃって私が届けたのが最初。
それから仲良くなって、帰りに寄り道してみんなで帰って、一緒にバスに乗って、みんなで勉強会して、別荘に行って、お祭りではぐれちゃって、迷子の蓮くんのお母さんを探して、2人で花火を見た。まだまだたくさんあるけど、時間なくなっちゃうからこの辺でやめておくね。

悠真くんからは思い出をたくさんもらったなぁ。
あの夜、公園で悠真くんが話聞いてくれてすっごく嬉しかった。
あんなに思いっきり話せたのも、泣けたのも。
悠真くんのおかげ。だからありがとう。
悠真くんが話を聞いてくれたから両親ともちゃんと話せた。
入院してからも毎日来てくれて、嬉しかった。
毎日たくさんの話聞けて楽しかった。
こんな事言うのちょっと恥ずかしいような気がするんだけどね……悠真くんに出会えたから今の私がいるの。
悠真くんのおかげなの、全部全部。
ありがとう。本当にありがとう。

それとね、悠真くんに言ってないことが一つだけあるの。
聞いてほしい。
私、悠真くんのこと好き。
私の話を聞いてくれて、病気である私を受け止めてくれて、毎日お見舞いに来てくれて。
どれも面倒なことのはずなのに、嫌な顔しないでいてくれた。
私のこと、支えてくれた。私はそんな悠真くんが好きになった。
でも、今想いを伝えたとしても、私は気まずくなるかもしれないから嫌だった。せめて生きてる間はこの気持ちを知られたくなかったの。
今更、死んだ後にこんなこと言ったら困らせるのはわかってるつもり。
でも伝えたかった。
たとえ悠真くんが私のこと嫌いでも、私は好きだよ。

私のこと忘れないで欲しい。たまにでいいから、思い出してほしい。ワガママ言ってごめんね。
あぁそんな奴いたな程度でいいの。ちょっとでいいから思い出して。

私はここで終わっちゃうけど、悠真くんにはまだまだこれからがある。幸せになって。それが最後のお願い。迷惑なやつでごめんね、面倒なやつでごめんね。

どう思われても私は悠真くんのこと大好き。
もし、来世とかそういうのがあるのなら、また会おうね。絶対、絶対、絶対!会おう!

悠真くん、最後に、今まで本当に本当にありがとう。
幸せになってね、またね、悠真くん』


少しの沈黙が流れ、DVDは陽菜の手により切られた。

「俺も好きだよっ……陽菜っ…!!」

俺は静かに部屋で1人、泣いた。
とめどない想いが涙となって溢れでてきた。