「悠真ー!湊ー!」

俺たちの名を呼びながら走ってくるのは、3年連続同じクラスで仲のいい鈴木さくら。
目には涙をいっぱいに溜めている。
その手には卒業証書とは別に、何か違うものを持っていた。

俺たちは高校3年になり、今日、卒業式を迎えた。
本当はもうひとりいるはずだったけれど。
残念ながらいない。
なくなったものは、俺にとっては大きすぎた。

「どうしたんだよ、さくら。つーかなんだそれ」

「これ!こっちは湊のやつ!」

「手紙?」

「こっちは悠真のやつ!」

「なにこれ、DVDと……手帳?」

俺と湊は訳が分からず顔を見合わせる。
それを渡してきたさくらはどこからここまで全力疾走してきたのかは分からないが、かなり走ったらしく息を整えるので必死だった。

「それ…!」

「一回落ち着こう、さくら」

「大丈夫かよ?」

「ちょっとまって……!それ、それね……陽菜からなの!」

陽菜……。
佐藤陽菜。高校1年の時。俺と湊とさくらともうひとり仲の良かった人。
高校1年の3月に病気で死んだ人。
俺たちの大事な友人。

「は!?どういうことだよ!」

「さっき!陽菜のお母さんとお父さんが私のとこに来て!陽菜が死ぬ前に!私たちに渡してほしいって!言い残したものだって!」

「なんで今……」

「渡す日、今日にしてほしかったんだって!陽菜が言ってたって!」

2人は手紙、俺には手紙じゃなくてDVDと手帳。
なんで俺だけ違うんだ?

「私、今読む」

「俺も」

「俺、手紙じゃないし……あ、じゃあ、手帳読むか」

俺たち3人は学校を出てすぐのところにある公園に場所をうつし、それぞれ読み始めた。