私とさくらはまた同じクラスだった。
私達は、小学校1年生の頃からずっと同じクラスで離れたことがない。
また一緒だね、と言いながら下駄箱で上靴に履き替え教室までの道を二人で歩いていく。

「えっ、さくら!そっちじゃないよ!」

「え?あっ」

「もう!」

「ごめんごめん!」

話の途中で違う方向にそれていくさくらを引き止める。
さくらは昔から方向音痴で私と話してる最中によく居なくなっている事があった。
今のがいい例だ。こんなのがどこか行くたびに起きる。
普通なら嫌になってくるのだろうが、私はならない。
それは、いつだって私のそばにさくらが居てくれたからで。
さくら以上の親友なんて出来ないことが分かっているから。
そんなことを何度か繰り返してやっと私たちのクラスである1-3に辿り着き、中に入る。
中では、同じ中学校同士で固まっているようだった。

「陽菜、座席表見に行こ!」

「あっ、うん!」

結果、佐藤と鈴木なので席が近いわけで
いつもはあいだに人なんていなかったけれど、高校では人が多いからか、間に別の人がいる
たしか、清水って人だったかな

「あーあ、間に人はいっちゃったね〜」

「うん、でも席近いしいいじゃん」

「うん、そうだね!」

私の後ろは2席空いていた。
できれば女の子がいいなぁ、なんて考えながらさくらと話しているとだんだん廊下が騒がしくなってきた。

「なんか廊下うるさくなったんじゃない?」

「そうだね、どうしたんだろう?」

「さぁ? それよりさ陽菜! 朝の男! ウチの高校だよね!」

「あー、うん。 制服同じだったから、多分ね」

「私の陽菜に近付くなんて許せない! 会ったら成敗してやる!!」

「もう、何言ってるの……」

そもそも私はさくらのになった覚えはないよ……
なんて心の中で苦笑しながら、さくらを見てた。
すると教室のドアが開いてさっきより廊下の声が聞こえてきて、あーもー、うるさいなぁ、なんだろう。
さくらも同じことを考えているのか眉を寄せて、迷惑そうな顔をしてる

「ホンットにうるさい! もうなによ! って陽菜!ちょっと陽菜!!」

「もう……なに?」

さくらも廊下の人達に負けず劣らずでうるさいよ。
なーんて口が裂けても言えないなぁ。

「ほら、アイツ!!」

そう言うさくらの目線の先を見ると……

「あっ……」

朝の男の子だった
やっぱり制服は同じでまさかのクラスも同じだった。
彼が落としたキーホルダーは手に持たれているスマホカバーに付けられていた。

「おっ、席近いな!」

「いつもだろ?」

「ははっ!そうだな!」

すると彼らはこちらに歩いてきた。
きっとさっき廊下で黄色い声を浴びていたのは彼らだろう。
それを考えると人に注目されるのが嫌なので、ついつい目を逸らしてしまったけれど、彼も私と同様で覚えていたみたいで。

「あっ……」

「えっと……」

なんて声をかけたらいいのかわからないのはお互い様のようで……。
お互い体は向き合っているけれど目線は合わない、そしてなんだか不思議な空気が流れている。
傍から見ればどのように見えるのか……。

「ん?」

そう言いながら私のことを見てきたのはさくらでも今朝あった彼でもなく、先程まで彼と話していたもう1人の男の子。
その人にも見覚えが、と言うより声に聞き覚えがあった。
あ、思い出した。朝この人のこと呼んでた人だ。……多分。

「俺も朝遠くにいたんだけど覚えてる?」

「あっ、はい……」

「俺、田中湊!よろしく!」

「朝はありがとう。俺は高橋悠真、よろしく」

「どういたしまして!私は佐藤陽菜です!こちらこそよろしく!で、この子は私の幼馴染の」

「鈴木さくら、よろしく!」

あれ、田中と高橋ってたしか後ろの席……。

「陽菜の後ろの席じゃん!」

「うん、そうだね」

「マジか!じゃあ席近いし話そーぜ!」

「そうだな」

その後私たちは4人で固まって話した。
それで分かったことだけど、さくらと田中くんは割と似てる系統の人だということ。
なんとなく、どっちもムードメーカーっぽい。
だからか2人で盛り上がっちゃってる。
そう言えば……。

「高橋くん」

「ん?」

「そのキーホルダー、そんなに大事なの?」

「え?」

「あ……えっと、渡した時なんだか安心した顔してたから、大事なものなのかなって思って……」

「うん、そうなんだ。これさ、初めて妹から貰った誕生日プレゼントなんだ。」

「そうなんだ、妹さん……」

きっと可愛いんだろうな……
高橋くんがこんなにカッコいいんだし……
すると、突然チャイムが鳴った。もうこんな時間か

「やばっ!もう席つかないと!」

「やべぇ俺も!!」

私と高橋くんの席の近くなので、高橋くんはそのまま、私は前に向き直るからすぐだけど、さくらは1つ分席が空くし、田中くんも高橋くんの後ろの席だから、少し移動がある。
そんな風に慌ててる2人を、私と高橋くんは微笑んで見ていた。