「大きい……」
「ひっろーい!!」
「海見えるぞ!海!!」
「部屋案内するからついてきて」
7月21日、私たちは今、沖縄にある高橋くん一家が所有する別荘に来ていた。
白を基調とした大きな別荘。
まるでそれは、どこかの国のお城を連想させる。
そこかしこにある家具は素人目の私でもわかるほど、高価なものだった。
触れればすぐに壊れてしまいそうなものまで、綺麗に置かれ、部屋には清潔感がある。
「なあ、皆!今日近くで祭りがあるらしいんだけど、行くか?」
「祭り!?」
「行く行く!行きたい!」
「その代わり明日からしっかり宿題やること!」
「陽菜〜〜」
「佐藤〜〜」
そんなふたりの声を無視して、私は胸を踊らせた。
「ふふっ、お祭り楽しみだなあ」
◆
夜、お祭りが開かれる神社にはたくさんの明かりと屋台が立ち並び、たくさんの人が歩いていた。
「人多いね」
「だな」
「う、うん」
「佐藤さん大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫!」
本当に人が多い。お祭りってこんな感じなんだ。
田中くんと高橋くんは背が高いから見つけやすくて助かる。
「あ!あれ美味しそう!」
「よし!行くぞ!」
「おー!」
そう言いながらさくらと田中くんは人混みの中を走っていった。
私はというと、人の流れに呑まれそうになっていた。
急がないと。そう思った途端、誰かにぶつかってしまったらしい。
「きゃっ」
ぶつかった相手は「すみません」っと言いながら進んでいってしまった。
しまった、足を止めてしまった。
見つかりやすいとか思ったけど、嘘。
全然見つからない。
「佐藤さん!」
「高橋くん!」
3人が行ったと思われる方向から高橋くん1人だけが走ってきてくれた。
「あ、ごめんね、遅くて」
「いや、あの二人が早いだけだよ、俺たちはゆっくり行こう」
「うん……!」
そこから、2人でゆっくりと回って行った。
手を繋がれた時は驚いたけど、逸れないようにらしい。
そして私たちが屋台を少しづつ少しづつ回っていると、どこからか子供の泣き声が聞こえた。
「あっ」
4歳か5歳くらいの男の子だった。
「高橋くん、迷子みたい!」
「え?あっホントだ」
「行ってみよう!」
幸いそこは人が少なく、男の子のところまではすぐに行けた。
「ねえ君、1人?お母さんはどうしたの?はぐれちゃった?」
「ぼ、僕がね、お母さんの手放しちゃって、そしたらね、人に押されて、お母さんとはぐれちゃった…」
と泣きながら教えてくれた。
どうしよう、やっぱり迷子センターみたいなところに行ったほうがいいよね。
「よし!兄ちゃん達とお母さん探そう!」
「え?」
高橋くんは男の子を肩車していた。
「見つかるかな?」
「分からないけど、探してみよう!」
「う、うん!ねえ、お名前なんていうの?」
「僕、蓮だよ」
「うん、蓮くんね。じゃあ、蓮くんは上からお母さん探してね」
「うん!」
そして私たちは蓮くんのお母さん探しを始めた。
それが10分前の話だ。
呼びかけてはいるものの、なかなかあらわれてはくれない。
蓮くんも高橋くんに肩車をしてもらい、上からキョロキョロ見回して探してくれているけれど、やっぱり見つからない。
心做しか、高橋くんも疲れてきているようだった。
「高橋くん1回休もう」
「そうだな」
近くのベンチに座る。
蓮くんは……不安げな表情だ。
こういう時、なんて声掛けてあげればいいんだろう。
「大丈夫だって!絶対見つけるからな!」
「うん……」
こういう時、子どもを励ましてあげられる高橋くんはカッコいいと思う。
妹想いで、さっきだって2人が走っていったのに私の心配をしてわざわざ戻ってきてくれて、逸れないようにと手を繋いでくれて、迷子の子供のお母さん探しまでして。
優しくて、勉強も運動もできて、カッコよくて。
チラッと横目で高橋くんを見ると、蓮くんと喋っていた。笑顔が綺麗な人だよなあ……って何考えてるの!?私は!!
「佐藤さん?顔赤いけど大丈夫?」
「え!?あ、うん!大丈夫!」
慌てた私は立ち上がったけど、立ち上がってもすることないよー……。
はぁ……
「蓮くんのお母さーん!!」
と一度叫んだ。
すると、遠くから蓮くんを呼ぶ女の人の声がしてきた。
そして人混みをかき分けてやってきた女の人を見て、蓮くんは笑顔になる。
それだけで分かった。
「お母さん!!」
「蓮!!良かった!蓮!!」
そう言いながら女性、蓮君のお母さんは蓮くんを抱き寄せ、目尻には涙が溜まっていた。
すると、ハッとしたように立ち上がり私たちに深々とお辞儀をしてくれた。
「ありがとうございました!」
「いえ!見つかって良かったです!」
「蓮、もうお母さんの手放しちゃダメだぞ?」
「うん!」
「じゃあね!姉ちゃん!兄ちゃん!」
そう言いながら手を振って人混みの中へ入っていく蓮くんに、私と高橋くんは笑顔で手を振り返したのだった。
「ひっろーい!!」
「海見えるぞ!海!!」
「部屋案内するからついてきて」
7月21日、私たちは今、沖縄にある高橋くん一家が所有する別荘に来ていた。
白を基調とした大きな別荘。
まるでそれは、どこかの国のお城を連想させる。
そこかしこにある家具は素人目の私でもわかるほど、高価なものだった。
触れればすぐに壊れてしまいそうなものまで、綺麗に置かれ、部屋には清潔感がある。
「なあ、皆!今日近くで祭りがあるらしいんだけど、行くか?」
「祭り!?」
「行く行く!行きたい!」
「その代わり明日からしっかり宿題やること!」
「陽菜〜〜」
「佐藤〜〜」
そんなふたりの声を無視して、私は胸を踊らせた。
「ふふっ、お祭り楽しみだなあ」
◆
夜、お祭りが開かれる神社にはたくさんの明かりと屋台が立ち並び、たくさんの人が歩いていた。
「人多いね」
「だな」
「う、うん」
「佐藤さん大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫!」
本当に人が多い。お祭りってこんな感じなんだ。
田中くんと高橋くんは背が高いから見つけやすくて助かる。
「あ!あれ美味しそう!」
「よし!行くぞ!」
「おー!」
そう言いながらさくらと田中くんは人混みの中を走っていった。
私はというと、人の流れに呑まれそうになっていた。
急がないと。そう思った途端、誰かにぶつかってしまったらしい。
「きゃっ」
ぶつかった相手は「すみません」っと言いながら進んでいってしまった。
しまった、足を止めてしまった。
見つかりやすいとか思ったけど、嘘。
全然見つからない。
「佐藤さん!」
「高橋くん!」
3人が行ったと思われる方向から高橋くん1人だけが走ってきてくれた。
「あ、ごめんね、遅くて」
「いや、あの二人が早いだけだよ、俺たちはゆっくり行こう」
「うん……!」
そこから、2人でゆっくりと回って行った。
手を繋がれた時は驚いたけど、逸れないようにらしい。
そして私たちが屋台を少しづつ少しづつ回っていると、どこからか子供の泣き声が聞こえた。
「あっ」
4歳か5歳くらいの男の子だった。
「高橋くん、迷子みたい!」
「え?あっホントだ」
「行ってみよう!」
幸いそこは人が少なく、男の子のところまではすぐに行けた。
「ねえ君、1人?お母さんはどうしたの?はぐれちゃった?」
「ぼ、僕がね、お母さんの手放しちゃって、そしたらね、人に押されて、お母さんとはぐれちゃった…」
と泣きながら教えてくれた。
どうしよう、やっぱり迷子センターみたいなところに行ったほうがいいよね。
「よし!兄ちゃん達とお母さん探そう!」
「え?」
高橋くんは男の子を肩車していた。
「見つかるかな?」
「分からないけど、探してみよう!」
「う、うん!ねえ、お名前なんていうの?」
「僕、蓮だよ」
「うん、蓮くんね。じゃあ、蓮くんは上からお母さん探してね」
「うん!」
そして私たちは蓮くんのお母さん探しを始めた。
それが10分前の話だ。
呼びかけてはいるものの、なかなかあらわれてはくれない。
蓮くんも高橋くんに肩車をしてもらい、上からキョロキョロ見回して探してくれているけれど、やっぱり見つからない。
心做しか、高橋くんも疲れてきているようだった。
「高橋くん1回休もう」
「そうだな」
近くのベンチに座る。
蓮くんは……不安げな表情だ。
こういう時、なんて声掛けてあげればいいんだろう。
「大丈夫だって!絶対見つけるからな!」
「うん……」
こういう時、子どもを励ましてあげられる高橋くんはカッコいいと思う。
妹想いで、さっきだって2人が走っていったのに私の心配をしてわざわざ戻ってきてくれて、逸れないようにと手を繋いでくれて、迷子の子供のお母さん探しまでして。
優しくて、勉強も運動もできて、カッコよくて。
チラッと横目で高橋くんを見ると、蓮くんと喋っていた。笑顔が綺麗な人だよなあ……って何考えてるの!?私は!!
「佐藤さん?顔赤いけど大丈夫?」
「え!?あ、うん!大丈夫!」
慌てた私は立ち上がったけど、立ち上がってもすることないよー……。
はぁ……
「蓮くんのお母さーん!!」
と一度叫んだ。
すると、遠くから蓮くんを呼ぶ女の人の声がしてきた。
そして人混みをかき分けてやってきた女の人を見て、蓮くんは笑顔になる。
それだけで分かった。
「お母さん!!」
「蓮!!良かった!蓮!!」
そう言いながら女性、蓮君のお母さんは蓮くんを抱き寄せ、目尻には涙が溜まっていた。
すると、ハッとしたように立ち上がり私たちに深々とお辞儀をしてくれた。
「ありがとうございました!」
「いえ!見つかって良かったです!」
「蓮、もうお母さんの手放しちゃダメだぞ?」
「うん!」
「じゃあね!姉ちゃん!兄ちゃん!」
そう言いながら手を振って人混みの中へ入っていく蓮くんに、私と高橋くんは笑顔で手を振り返したのだった。