私は、シャワーを浴び濡れた髪をタオルで拭きながらリビングへ向かった。シャワーを浴びた時に沁みた肘の辺りを確認する。うっすら血が滲んでいた。

「入るぞ!」

海里さんの声が、二階の入口の辺りから聞こえてきた。
海里さんも、ショップで客用のシャワーを浴びたのだろう。

「うん」

 海里さんは、両手に湯気の立ったマグカップを持って入って来た。

 二階は、リビングと寝室しかなくて、海里さんが二階に来ることはめったにない。海里さんは、マグカップをテーブルに置くと、チラッと私を見て又下へ降りて行ってしまった。

 マグカップには暖かいコーヒーが入っている。


 私は、暖かいマグカップを両手で包み湯気を見つめた。段々と、気持が落ち着いてくると、一体何が起きたのか理解しようとして、顔がカーッと熱くなった。


 キスしたのかな?
 私は、そっと手で自分の唇に触れてみた。

 でも、なんで?
 海里さん、婚約したのに……

 でも、側にいるって……
 全部背負うって、どういう意味なんだろう?

 思い出しただけで、胸がドキドキと高鳴ってきてしまった。


「おい、見せてみろ……」

 突然の声に驚いて飛び上がりそうになった