夕日がオレンジ色に海を染め初めると客さん達の姿も消え、テラスにバーベーキューの用意を意を始めた。

 海里さんが、墨をおこしてくれている。


「かなちゃん、肉とエビにホタテ買ってきたよ」

 ユウちゃんが、白い発砲スチロールの箱を抱えて入ってきた。


「これも!」

 と、続いて両手に花火の袋を下げて入ってきたのは高橋くんだ。


「もう花火? ちょっと早いんじゃないの? しかもこんなに沢山」

 私は、キッチンから顔を出した。


「いいの、いいの。これから忙しくなるんだから。今のうちに楽しまなきゃ」

 ユウちゃんは、鼻歌を歌いながら、発砲スチロールの蓋を開けた。


「お前は、いつだって楽しいんじゃないのかよ?」

 うちわで墨をおこしながら、海里さんが言った。


「うるせぇ、俺はお客様に夏を楽しんでもらう為に、楽しいふりをしているだけだ」


「へえ―」

 海里さんが白い目でユウちゃんを見た。


「おお、じゃあ勇太、盆休みも頼むぞ」


 いつの間にか帰ってきていたパパが、ユウちゃんの肩をガシっと叩いた。


「頼まれちゃしょうがないなあ」

 ユウちゃんは、クルリと向きを変えてパパの肩をガシっと叩いた。


「でも、ユウさんって仕事は大丈夫なんですか? バイトとかマズイいんじゃ?」

 高橋君が、不思議そうな顔でユウちゃんを見た。


「ああいいの、いいの。バイトじゃなくて趣味って言ってあるから。それに、バイト代殆ど、ダイビング用品と交換みたいなもんよ。まあ、俺は大丈夫だけど、海里はいいのかよ?」


 少し曇った顔でユウちゃんが海里さんの方を見た。


 そういえば、海里さんの会社ってどこなんだろう? 
 確かに、休みとはいえ家でバイトなんかしていていいのだろうか? 

 ユウちゃんの言葉が気になり、海里さんの顔へ目を向けた。