しばらくして、俺は又あの海岸に行った。

いつものように仲間と女を引き連れていたが、俺は、この間のサーフィン少女の事が気になっていた。目を凝らして沖を探すと、明らかに綺麗な波乗りに直ぐに彼女だと分かった。
ここまで来てなんだが、付いて来た仲間たちがウザく感じた。こんな事は始めのような気がする。


 やはり、俺は彼女の波に乗る姿に目が離せなくなる。

俺もボードを漕ぎ波に乗った。同時に波に乗った彼女が遠く視野に入り、海の上を二人きりのような錯覚になった。波の音も、風も俺達だけしか感じていないような気がして、すごく気持ち良かった。

 ただ、それだけの事だった。


 波から降りた彼女を目で追い、簡単に声を掛けられると思っていたのに、言葉が見つからなくなった。

 海を見つめる彼女の目は凄く澄んでいて、俺なんかを写しちゃいけない気がした。
 俺はいつでも一番で、誰もが俺に従う。それなのに、俺は自分を初めて卑下していた。


 声を掛けられずに迷っていると、一人の男が彼女に近づいた。ナンパなら助けてやろうかと、かっこいい演出を考えたが、知り合いらしく笑いながら岸に上がってきた。

 ちょっとだけ、胸の中が面白くないと言っているのが分かった。
 その上、その男の顔に見覚えがあった。確か、同じ大学の同じ学部の浜島勇太と言った気がする。俺もいつも派手に固まって歩いているが、あいつの周りも人が囲っている。明るくてノリの良いイメージだが、何故か俺は係わった事が一度もない。なんとだくだが、俺の周りの奴らとは雰囲気が違がう気がする。


 なぜ、あいつがここに居るのか? 
 見渡す限り、彼の仲間の姿は見えない。

 勇太と彼女が俺の方へ向かって歩いてきた。そうは言っても顔見知りだ。声ぐらい掛けてくるだろうと思った。だが、すれ違った瞬間、勇太はチラリと俺を見たが、知らない振りをして行ってしまった。

 気付かなかったのだろうか? 

 まさかこの俺を?

 だったら自分から声をかければ良かったのかもしれない。だが、その頃の俺はくだらないプライドの固まりの世間知らずのガキでしかなかった。