「俺も、奏海さんに何かプレゼントしていいですか?」

「えっ? 俺もって…… 別にそんなのいいわよ」

私は驚いて、両手を横に振った。


「いつもお世話になっているし、お礼がしたいんです」

なんとなく、高橋くんの距離が近くて圧迫感がある。


「お世話になっているのは、こっちのほうよ。気にしないで」

笑顔を崩さずに、少し距離をとりながら言ってみた。

 だが、高橋君の表情は曇った。


「海里さんからのは嬉しそうに貰って、俺からの物は受け取れないって事ですか?」


「えっ? そう言う訳じゃないわよ」

 正直なんて返事していいかわからない。


「はっきり言いますけど、あんな金持ちの彼女なんか連れてきて、めっちゃ気分悪いんですけど。店の事もバカにして、海里さんも海里さんですよ。平気な顔して」

 高橋君の顔は、本気で怒っているのが分かる。


「う、うん。でも、お客さんだし。そんなお客さん今までだっていたから……」


「へえ―。じゃあ、奏海さんは、ただの客だって海里さんの彼女を割り切れるんですね?」


「えっ?」

 私は、胸の中の触れたくない部分に針がささったように、チクリと痛みが走った。


「やっぱりね…… でも、海里さんはやめておいたほうがいい。俺達とは違う世界の人だ。俺だったら、ずっと奏海さんの側にいられるのに」


「どういう意味……」

 私は、恐る恐る高橋君の目を見た。


「いえ、別に…… 奏海さん、プレゼント楽しみにしていて下さいね」

 高橋君がにこりとほほ笑み、私の方へ腕を上してきた。


 私が一歩後ろに下がった時。

 ガタン!

 扉の開く音が響いた。