スープの入った鍋に火をかけるのと同時に、入り口のドアが開いた。


「おー。いい波だったな」

「気持ちいい」

 ウエットスーツを脱ぎ、まだ濡れた髪をタオルで乾かしながら、がやがやと数人の男達が入って来た。


「いらっしゃい」

 いつものように声をかける。


「おはよう、かなちゃん。いつものモーニングセット」

「はい」

「俺も」

「はい」

 返事をし終えると、最後に入って来た男性とチラリと目が合った。


「海里さん おはようございます」

 ニコリとパンにバターを塗る手を休めす笑顔だけを向けた。


「おはよう。いつもの頼むわ」

 彼は、チラリと私の目を見た。


 カウンターの上から新聞を手に皆とお同じテーブルに座ったのは、志賀海里(しがかいり)二十六歳。

 背が高く、夏の初めだというのに日焼けした顔は、モデルにでもなれるじゃないかと思うほど整っている。


 この店がオープンした時、彼はまだ大学生で、その頃からの常連客でもあり、忙しいシーズンはヘルプに入ってくれている。



 どちらかというと、クールなイメージで余計な事は言わない。


 だけど……