俺と奏海は、店のテラスに戻ってきた。

 不思議と、どっちのテラスも俺にはしっくりきて、同じ位に大切な場所だ。


 海の色がオレンジ色に変わりだした。

 俺は、テラスの手すりに立つ奏海の横に並ぶ……

 俺は、大きく息を吸い込んだ。

 やはり緊張するが、それ以上に目の前の奏海がオレンジ色の光りに反射して綺麗で、俺の背中を押す。


「奏海…… 俺と結婚して下さい」

 俺は、胸のポケットから小さな箱を取り出した。

 奏海は、目を見開いたまま瞬きひとつしない。
 聞いていなかっのかと不安になる……


「いい?」

 俺は、確認するように、箱の蓋を開け取り出したリングを見せた。


 奏海は、大きく肯いた。

 俺は、奏海の柔らかい手を取り、そっと薬指にリングをはめた。


 その瞬間、奏海が震える声で言った。


「海里さんが、好き……」

 今度は、俺が驚く番だ。

 そんなにストレートに言われたらたまらない……

 俺が言うはずだった言葉を先に言われてしまった。
 俺の負けだ……


 しかも、奏海は、俺の胸に飛び込んできた。


 俺は、この瞬間をどれだけ待ったのだろう……

 奏海の気持が、今、俺の中にある……

 俺は、奏海の為なら、きっと何でも出来るだとう……

 奏海を後ろから抱きしめる、この瞬間がたまらない……

 二人で海を見つめだけで、全て溶けていくようで安心する……


 これから、このテラスで、いくつもの風を感じるだろう……

 でも、どんな風でも、どんな嵐でも、必ず俺が奏海を守っていく……


 このテラスで……


                        「完」