経営方針発表の日は、青空が海に反射し眩しいくらいにキラキラ光っていた。

 朝から、俺は最終の準備に追われている。
 しかし、俺は、ちらちらと店の方を見ては、奏海がちゃんと来るか気になり落ち着かない。


「海里、お疲れ」

 資料に目を通す俺の肩をバシっと叩いたのは勇太だ。

 勇太の顔を見た途端、咄嗟に口から出てしまう。

「奏海は?」

「大丈夫、今、姉ちゃんが支度させてる。なんだかんだと、かなちゃん騒いでたぞ。まあ、姉ちゃんに任せておけば大丈夫だろ」


「そうだな……」

 経営発表の緊張もあるが、奏海の事を考えると胸の中がキュンと苦しくなってくる。
 やばい、落ち着け……


「でも、お前凄いよな…… こんな大勢の前で経営発表なんてさ…… 普通の奴じゃできない。しかも、そんなに堂々としてさ……」

 俺は、勇太のを見て目を見開いた。


「俺が堂々と?」


「ああ…… 誰が見たって、堂々としているよ」


「そんな事はない…… 内心、ハラハラだ……」


「そうか? そりゃ、かなちゃんの事でだろう? 流石の海里も、マジな女には手も出せないもんな」

 勇太は、俺を見てニヤリとした。


「うるせぇ」

 顔が熱くなったのが分かって、勇太に背を向けた。

「ほら、来たぞ」

 勇太が、目をロビーの入口に向けた。


 おやじさんの姿が見えた、その後ろを小さくなって入って来たのは、淡いブルーのワンピースに身を包んだ奏海だった。


 予想した以上に綺麗で、思わず見つめたまま止まっていた。


「いいのかよ、行かなくて?」

 勇太の声に我に返った。

 行くのは今じゃない。もう少し後だ。

 俺は、奏海に見つからないよに、影から見つめる。
 奏海がテラスに立つ瞬間が見たい。
 本当は、一緒に見たかったが仕方がない……


 奏海の顔が、テラスに出た瞬間、驚いたように目を見開いたのが分かった。

 そして、気持ちよさそうに海を眺めていた。

 俺は、その姿に、キリッと体の中に熱い力が入った。