大阪の本社での会議に足を運ぶ。
 クルーズの話もしなければならない。

「海里!」

 後ろからの声に振り向くと、兄貴が手を上げた。同じ会社で働いていても、めったに会う事はない。兄貴は、製品開発の担当で、俺とは殆ど共通点が無い。今は、飛行機のなんらかを始めたと聞いているが……


「兄貴、久しぶり」

「おお、ちょっといいか?」

「ああ」


 俺は、兄貴に続いて空いている会議室へと入った。


「なあ、頼みがあるんだ……」

 俺は、その言葉に一度座った席を立った。
 嫌な予感しかしない……


「おい、何で立つんだ?」


 兄貴とは仲が悪いけでは無いが、特別仲の良い兄弟と言う分けでもない。
 ただ、幼い頃から、兄貴の頼みに手を貸して、ろくな事は無かった。


 俺達兄弟は、周りから見れば特別な家だったらしく、立派な教育を受けているわりないは、一般的な経験を知らない事が多かった。
 真面目で、なんでも熟す兄貴だが、時々、気になる事があると試してみたくなる、変な好奇心を持っていた。

 今でも、忘れない……