「全く…… 心配かけやがって」

 奏海の傷の手当を済ませると、安堵のあまり思わず口から漏れた。
 そして、奏海の頭を軽く手の平で撫でた。

「ごめんなさい……」

 下を向いて、申し訳なさそうに小さくため息を着く奏海の姿に、あのままテラスから落ちてしまって居たらと思うと、思わず手に力が入り奏海を胸に引き寄せた。

 奏海は、少し驚いたようにビクッとなったが、そのまま俺の胸に顔を埋めた。

「嵐が…… お前を連れていっちまったら、俺はどうすりゃいいんだ?」

「えっ?」

 奏海が俺の胸がから、少し顔を上げ聞き返した。


「俺だって、大切なもの奪われたくないんだ……」


 奏海は、俺にとって掛け替えのない大切なものだ。
 分かっているんだろうか?

 奏海は、何も言ってくれない……

 俺は、奏海の頬を両手で包み、目を合わせた。さっきの冷たい頬とは違い、暖かくて柔らかい頬に触れた俺の手も熱くなってくる。


 奏海は、何か言いたげに俺の目を見ている。


「どうした? 何とか言えよ……」

 俺の言葉に、奏海がポツリと口にした事に俺は驚いて目を見開いた。