えっ!

「えっ!」

 声を出したのは兄貴の方で、俺は声も出せず、その写真を手に取った。

 その写真には、あのリゾートホテルのテラスが写っていた。

 だが、テラスの手すりに並ぶのは、父、そして、おやじさんと梨夏さんだった。
 三人は、楽しそうに笑っている。


「父さん…… これ……」

 俺は、何の意識もなく、社長では無く父さんと呼んでいた。


 父は、少し切なそうな目を俺に向けた。


「俺達は、大学のサークル仲間だった。スキューバーダイビングのなぁ…… 」

「うそだろ? 父さんがダイビング?」

 兄貴が、たまらず驚いて声を漏らした。

「ああ…… 悪か?」

 父がチラッと兄貴を睨んだ。

「いや……」

 兄貴は、そう言って黙った。


「俺達は、ダイビングのあと、あのテラスでよく一緒に過ごしたものだ…… 
 あの、ホテルが人手に渡る話が出た時、俺は、あのホテルを買い取とる事が出来ると思った。その変わり、俺と結婚して欲しいと梨夏に言った。だけど、惨敗…… 
 颯太に負けた…… 
 まあ、よく考えれば、そんな、卑怯な手に梨夏は嫌気がさしたのだろう…… よく考えれば、そんな事に乗るような人じゃないなのに…… 俺は、焦っていたんだ……」


 父は、懐かしく、そして少し後悔の表情を見せた。


「こんな事があるんだろうか……」

 俺は、混乱した頭の中を整理しはじめた。


「それから、俺は二人に合っていない…… 颯太が、ダイブショップを初めていたなんて知らなかった……」

 父は、気持を落ち着かせるように、コーヒーを口に含ませた。