「リゾートホテル事業をやりたいんです」

 俺は、鞄からノートパソコンを取り出しテーブルに置いた。今までホテル事業についてまとめたデーターを画面に写した。

 しかし、父も兄貴も、何の反応も示さない。所詮、俺の事業計画など興味も無いという事だろうか?


 それでも俺は、言葉を続け具体的なリゾートホテル買収へと切り替えた。
 画面に、現状のホテル、俺の企画したホテル像を説明する。

 そして、俺は、昔のリゾートホテルの姿を画面に出した。


「あっ……」

 俺は、声のする方へ目を向けた。

 今まで、黙りこくっていた父が、僅かに驚いたような声を漏らした。一瞬だが確かに目が泳いだ。だが、それだけであり、後は何も言わなかった。

 俺は、パソコンに視線を戻し、話を続けた。


 一通り説明が終わると、答えを求めるよう父親の顔を見た。


「海里、お前のリゾートホテル事業への意欲は分かった。だが、情だけでは、事業というものは成り立たない。お前は、私情が仕事へ影響し過ぎている」


「社長……」

 確かに、社長として最もな意見なのかもしれない。
 だけど、俺は諦める訳にはいかない。

「本気で、リゾート開発部門を背負っていくつもりなら、もっと責任あるプレゼンをしろ。今の内容では、役員達を納得させられない。リゾートホテル買収の具体的な物は分かった。だが、リゾート開発事業としての全体的な方向が見えない」


 そりゃそうだ、今ここへ来る前にたどり着いた計画なのだから……


「はい。リゾート開発部門について、企画を立てさせて頂けないでしょうか」


「それはかまわない。結果を出すのは私だけではない。役員会で納得させられる物を出せるのではれば、問題はない」


「はい。ありがとうございます」

 俺は、父の目を真っ直ぐ見て返事をした。


「それと、きちんと段を踏んで企画を上げろ」


 要するに、自分の力で企画を通せという事だ。勿論、それは分かっている。

 ただ、俺はチャンスが欲しかった。


「勿論、分かってます」

 俺が、片付けようとパソコンに手をかけ時だ。